史跡めぐりにて1
史跡めぐりが趣味の友人からメッセージが入ったのは、ちょうど仕事を終えた帰り道だった。
画面を開く
「明日の夜空いてないか? ちょっとオモロい経験したんや」
とだけ書かれている。
面白そうだと思いながら予定を確認する。
幸い、明日は休みだ。
ここ最近では珍しく、何の予定も入れていない。
家でゆっくり読書でもしようかと思っていたくらいなので、二つ返事で「空いてるぞ」と返した。
すぐに返事が来る。
「よっしゃ。ほんなら、いつもの居酒屋に怪談フリークのお前と、もう一人の友達も呼んで聞いてや」
やけにテンションが高い。
何かあったのかと思いつつ、もう一人の友人にも連絡を入れる。
「明日空いてないか? 史跡めぐりのあいつがおもろい話持ってくるらしいぞ」
既読はすぐについた。
返ってきたのは、いつも通りの短い文だ。
「行くわ」
相変わらず簡潔すぎる返事に苦笑しながら、夕闇が迫るホームで電車を待つ。
ふと、思い出した。
あいつが“面白い”と言う話は、大概ろくな話じゃなかった。
けれど、まあ、また不思議な経験でもしたんだろう。
そんな軽い気持ちで、その日は家へ帰った。
翌日、昼前に目を覚ました。
年甲斐もなく、昨日のメッセージが気になって少し寝つきが悪かった。
寝過ぎたな、と思いながらキッチンに向かう。
食パンを一枚取り出し、真ん中を少し凹ませてチーズを置き、卵を割り入れる。
トースターに放り込み、適当にダイヤルを回す。
その間に湯を沸かし、コーヒーを淹れる準備をする。
夜は外で食べるし、昼もついでに済ませてしまうかと、冷蔵庫に残っていたベーコンをフライパンに並べた。
パチパチと油がはじける音が心地いい。
ついでに昨日の残り物のきのこも放り込む。
すぐにいい匂いが立ちのぼり、ぼんやりしていた頭が少しずつ冴えてくる。
ちょうどそのタイミングで、トースターが「チンッ」と軽い音を立てた。
皿にパンを移し、焼けたベーコンときのこを添える。
コーヒーを注いでテーブルに置いたところで、スマホが震えた。
史跡めぐりの友人からだ。
「今日、ちょっと早めに来れるか? 話、まとめときたいねん」
短い文面だが、昨日より少しだけ真面目な感じがする。
あいつが“まとめる”なんて言葉を使うのは珍しい。
「了解。何時にする?」と返して、皿に手を伸ばした。
それだけの、いつも通りの昼前だった。




