同窓会にて9
沈黙が続いた。
どう声をかけていいか分からず、ハンドルを握る手だけが、妙に意識に残った。
ふと、口が勝手に動いた。
「お前さ、来週なんか予定あるんか?」
「いや、ないけど……どうした?」
「とりあえず空けといてくれ」
そう言うと、友人は不思議そうな顔をしながらも、
「ええよ」
とだけ返してきた。
そのまま友人を家まで送り届け、俺も自分の家へ帰る。
夜中になっていたが、どうしても気になって廃墟をメインで撮っている撮影仲間にメッセージを送った。
“ちょっと聞きたいことある。起きてるか?”
既読はつかないだろうと思いながら、
風呂の準備をしていると、ピロン、とスマホが鳴った。
画面には、廃墟撮影の友人からの返信。
“こんな時間に珍しいな。
どうした”
その一文だけで、
胸の奥が少しだけ軽くなった。
“隣県の○○廃墟って、許可取りってどこか知らない?”
そう送ると、思ったより早く返事が来た。
“俺、知り合いだからすぐ取れるけど……珍しいな。
お前、最近廃墟撮らねえじゃん”
画面を見つめながら、少しだけ息を吐く。
“実はな、高校の同級生がそこへ行ったっきり連絡無いやつがいてな。ちょっと見てみたいって感じなんだよ”
送信して数秒。
またすぐに返事が返ってきた。
“いつ行くつもりだ?
連絡しといてやるよ”
「来週末に行きたい。
なんか挨拶行くべきとことかあるか?」
そう送ると、すぐに返事が来た。
“いや、要らないよ。
じゃあ許可取るから、無理すんなよ”
短い文面なのに、
相手の声の調子まで聞こえてくるような気がした。
そのまま同級生の友人にもメッセージを送る。
“土曜日、出かけよう。
動きやすい格好で来いよ”
既読がつくのを待つまでもなく、
すぐに「了解」と返ってきた。
画面を閉じると、部屋の静けさが急に濃くなった気がした。
来週末。
あの廃墟へ行く。
その事実だけが、じわりと胸の奥に沈んでいった。




