同窓会にて7
友人は、この店によく来るのだろう。
女の子と楽しそうに話している。
笑い声が混ざり合って、さっきまでの重さが少しだけ薄まったように見えた。
けれど、ふと視線を感じた。
先生が、こちらをじっと見ていた。
グラスを持つ手が止まっている。
その目は、さっきまでの柔らかい笑顔とは違っていた。
「どうしたんです? 先生」
そう声をかけると、先生は少しだけ間を置いてから言った。
「いや……お前らの会話が聞こえてな。
あいつ、行方知れずなんか?」
その言葉は、店内のざわめきの中で妙に重く響いた。
俺はコーラを一口飲んで、
喉を通る冷たさで気持ちを整えてから答えた。
「俺も今聞いたところです。
そうみたいです」
そう返すと、先生はゆっくりと目を伏せた。
その仕草が、十年前の“叱る時の先生”ではなく、
“心配している大人”のそれだった。
「……そうか」
短い言葉だったが、その声には重さがあった。
やはり、何年経っても先生は生徒が心配になるものなのだろう。
特に俺たちの世代は、問題児が多かった。
授業を抜け出すやつ、
実習でふざけて薬品をこぼすやつ、
文化祭で勝手に企画を変えて怒鳴られたやつ。
先生はそのたびに頭を抱えながらも、
最後まで俺たちを見捨てなかった。
その先生が、
今こうして眉を寄せている。
店内のカラオケは相変わらず賑やかで、
他の客たちは楽しそうに歌っている。
笑い声も響いている。
なのに、俺たちのテーブルだけ、空気がひとつ沈んだように感じた。
先生はグラスを軽く揺らしながら、
ぽつりと呟いた。
「……無事やったらええんやけどな。
あいつ、昔から無茶するところあったしな」
その言葉が、胸の奥にじわりと沈んでいった。
女の子と友人がこちらの会話に気づいて入ってきた。
女の子が、思い出したように言う。
「そういえば最後に来た時、
その廃墟には“ひとりで行く”って言ってましたよ」
その言葉に、隣の友人がわずかに顔を曇らせた。
そして俺の方を向き、少し声を落として聞いてくる。
「なあ……その廃墟って、
夜に一人で撮影に行けるような場所なんか?」
俺はコーラのグラスを指で軽く回しながら答えた。
「いや、夜で一人だとかなり大変だよ。
機材の量も多くなるしな……
星だけならカメラと三脚だけで行けるけど……」
そこまで言ったところで、友人も女の子も、自然と黙り込んだ。




