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友人?3

次の日の午前中、スマホが小さく震えた。

画面を見ると、昨日の友人の名前があった。

晩飯行ける?

短い。

昨日の“あの電話”とは違って、

今日はメッセージだった。

昼前の静かな部屋に、

その一文だけがぽつんと浮いて見えた。

不思議に思いながら、

行けるけどどしたー?

と返す。

数秒もしないうちに、返事が来た。

中華料理食いたいねん

その文字を見た瞬間、

胸の奥が、ゆっくり沈むような感覚になった。

昨日、蒸し鶏が売り切れてガッカリしていたのは確かだ。

けれど、翌日にまた同じ店を指定してくるほど、

あいつは食べ物に執着するタイプじゃない。

むしろ、「まぁええか」で済ませる側の人間だ。

そんなに蒸し鶏食いたかったんか…?

そう思いながら、

ええよ。今日は迎えに行くわ

と送ると、

ありがとう

とだけ返ってきた。

その「ありがとう」が、

いつもより少しだけ温度が低い気がした。

飲んでいたコーヒーカップをテーブルに置く。

底に残ったコーヒーが、

昼過ぎの光を受けて黒く揺れた。

その揺れ方が、妙に落ち着かない。

首を傾げる。

昨日のことを思い返す。

店に入った時の彼の声。

車の中での、あの平坦な返事。

蒸し鶏が売り切れた時の、

いつもより静かな落胆。

そして、昼に電話してきた時の声。

全部、同じはずなのに、

どこかが微妙に噛み合っていない気がした。

いや、昨日と同じ店に行きたいって言うか…?

その疑問だけが、

胸の奥に小さく沈んでいく。

理由は分からない。

分からないから、余計に気になる。

違和感はある。

けれど、形にはならない。

ただ、薄い膜みたいにまとわりついてくる。

とりあえず、

その不思議な感覚を抱えたまま、

約束の時間まではのんびり過ごすことにした。

ただ、スマホを伏せたあとも、

さっきの「ありがとう」の文字だけが、

妙に頭の中に残っていた。

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