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友人?2

駅に着いたのは、約束の時間よりだいぶ早かった。

昼過ぎの光はまだ強くて、影が短い。

風は弱いのに、どこか乾いた匂いがした。

近くの喫茶店に入り、

窓際の席でアイスコーヒーを飲みながら時間を潰す。

店内は静かで、氷が溶ける音だけが小さく響いていた。

スマホが震えた。

画面には、さっき電話をかけてきた友達の名前。

通話に出ると、

外の雑音を背負った、あいつの声が聞こえた。

「着いたでー」

その言い方が、

昼の光より少しだけ平坦に聞こえた。

「すぐ出るわー」

会計を済ませて外に出ると、

駅前のロータリーに車が一台停まっていた。

見慣れた色、見慣れた型。

運転席の窓が少しだけ開いている。

「お疲れー」

そう言って助手席に乗り込むと、

彼はいつもの調子で片手を上げた。


「おぅ、とりあえず飯いこや」


軽い言い方だった。

けれど、声のトーンがどこか平坦で、

いつもの“軽さ”が少しだけ欠けているように聞こえた。

車はゆっくりと動き出す。

中華料理屋は駅からすぐの場所だ。

ほんの数分で着く距離だ

なのに、彼の運転は妙に慎重で、

アクセルを踏む足が、

いつもよりわずかに重たそうだった。

少し違和感を感じた。

けれど、「まぁ、嫌なことでもあったんかな」

そう思って、とりあえず彼の運転に身を任せた。

中華料理屋に着き、暖簾をくぐる。

熱の入った油の香りがふわっと広がって、

その瞬間、腹がぐうと鳴った。

テーブル席に腰を下ろすと、

彼はメニューも見ずに腕を組んだ。

「急なお誘いはいつもやけど、今日は割と圧強めやったな」

そう言うと、彼は口元だけでへへへと笑って、

「ええやろ」

と、いつもの調子で言った。

店員が来て、いつも通りの注文を入れる。

けれど、彼の好物の蒸し鶏だけが売り切れていた。

「あちゃー、こらあかんな」

そう言って、ほんの少しだけ肩を落とす。

その落とし方が、いつもより静かだった。

「まぁまぁ、また来ればええやん」

そう返しながら、

他愛ない話をして、飯を食った。

会話も、味も、店の空気も、全部いつも通り。

なのに、どこか違和感があった。

特に何かおかしいというわけではない。

ただ、彼の言葉の間に、

ほんの少しだけ“空白”があるように感じた。

お会計を済ませ、店を出る。

外の空気は昼より冷えていて、

食べすぎた腹が少し重かった。

「腹ごなしに歩いて帰るわ」

そう言うと、彼は急に軽いノリに戻ったように、

「またなー」

と手を振った。

その日はそこで別れた。

ただ、歩き出して数歩のところで、

ふと、さっきの彼の声が

“昼に電話してきた声”と

微妙に違っていた気がした。

気のせいだと思った。

その時は、まだ…

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