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近所の公園で7

家へ戻る道を、甥っ子と並んで歩いていた。

さっきまで遊具で走り回っていたせいか、

甥っ子の手はまだほんのり温かい。

その温度が、冬の冷たい空気の中で妙に際立って感じられた。

公園を離れると、周囲はいつもの住宅街の静けさに戻る。

遠くで車の音が一度だけ響き、すぐに消えた。

風もほとんどなく、空気が張りつめているようだった。

甥っ子は特に話すでもなく、

ただ手を繋いだまま、前を見て歩いている。

その静けさが、さっきまでの賑やかな家の中とはまるで別世界のようで、自分の呼吸の音までやけに大きく感じた。

そのときだった。

甥っ子が、ほんの小さな声でぽつりと呟いた。

「あの子……誰だったんだろう?」

風に紛れそうなほどの声なのに、

その言葉だけが妙にくっきり耳に届いた。

「えっ?」

思わず声が漏れる。

甥っ子は立ち止まり、こちらを見上げた。

表情はいつも通りで、特に怖がっている様子もない。

「ほら、公園のそばにいた子。

 この辺の子なんかなって思って」

さらりと言う。

本当に、ただの疑問を口にしただけのような顔だった。

でも、俺には、そんな子は見えていなかった。

公園には誰もいなかった。

遊具の金属の冷たさと、甥っ子の足音だけがあった。

あの静けさの中に、もうひとり子供がいたなんて、

そんな気配はまったくなかった。

胸の奥が、ゆっくりと冷えていく。

さっきまでの温かい手の感触が、

急に遠くなるような感覚がした。

「……そうか」

それだけ返すのが精一杯だった。

甥っ子は特に気にした様子もなく、

「帰ったらジュース飲むー」と言いながら歩き出す。

その声だけが、妙に明るく響いた。

家の方からは、親戚たちの笑い声が微かに聞こえてくる。

その賑やかさが、今はなぜか遠く感じた。

甥っ子の手を握り直しながら、

もう一度だけ、公園の方を振り返る。

冬の空気は澄んでいて、

遊具の金属が薄く光っているだけだった。

誰もいない。

何もいない。

……はずなのに、

胸の奥の冷たさだけが、

なぜか消えなかった。

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