近所の公園で6
「寒いから、あんまり長い時間はアカンで」
そう言いながら、甥っ子と手を繋いで歩く。
小さな手は思ったより温かくて、
冬の空気の中でその温度が妙に際立って感じられた。
公園へ向かう途中、向かいの家のマダムが犬を連れて出てきた。
白い息を吐きながら、こちらに気づいて微笑む。
「あら、おはよう。新年おめでとう」
「おめでとうございます。賑やかですみません」
「いいのよー。ほんま寒いわねぇ」
「甥っ子ちゃん、おじさんに遊んでもらえて良かったわねぇ」
そんな軽い会話を交わし、
「ほな、また」
と手を振って別れた。
公園に着くと、誰もいなかった。
風もなく、遊具の金属だけが冷たく光っている。
朝見たあの子の姿も、当然どこにもない。
少しだけホッとしながら、甥っ子を遊具へ向かわせる。
「ブランコ押してー」
甥っ子が振り返る。
「ほいほい」
背中を軽く押すと、
ブランコの鎖がきしむ音が、冬の空気に細く響いた。
甥っ子は足をぶらぶらさせながら、
ゆっくりと前後に揺れる。
その揺れが、静かな公園にぽつんと浮かぶようだった。
次は滑り台へ向かう。
金属の階段を上る足音が、カン、カン、と乾いた音を立てる。
甥っ子が上から手を振り、勢いよく滑り降りると、
冷えた滑り台が短く鳴った。
「もう一回やるー」
そう言ってまた階段を上る。
その背中を見ながら、自分も少しだけ肩の力が抜けていくのを感じた。
ふと、甥っ子が遊具の端
公園の隅の、誰もいない一角をじっと見つめていた。
「どうしたんや?」
声をかけると、甥っ子は少しだけ首を振った。
「ううん、なんでもない」
そう言って、こちらを見上げる。
その表情はいつも通りに見えたけれど、
視線の奥に、ほんの一瞬だけ影のようなものが沈んだ気がした。
「そろそろ帰るー」
甥っ子がそう言って手を伸ばしてくる。
その声が、静まり返った冬の公園に
やけに澄んで響いた。




