近所の公園で4
親戚が揃いはじめると、座敷のテーブルには寿司やおせちがぎっしり並んだ。
酢飯の香り、煮しめの湯気、黒豆の甘さが混ざり合って、部屋の空気が一気に正月の“食卓の匂い”に染まる。
「ほな、いただきましょかー」
誰かの声を合図に、箸が一斉に動き出した。
その直後だった。
「アンタ、まだ結婚してへんの?」
おばさんのひとりが、寿司をつまみながらこちらを覗き込んでくる。
「ほんまやで。ええ人おらんの?」
「はよせなアカンで。あっという間に歳いくんやから」
毎年恒例の“結婚しろ攻撃”が始まった。
「いやぁ、まあ、ぼちぼち…」
苦笑いで流そうとすると、
「せやせや、はよ結婚せなあかんぞ」
「若いうちが華やで」
「お前も親孝行せなあかんで」
酒を飲み交わしていたおじさんたちまで、
酔いの勢いで援護射撃してくる。
「ほんま、アンタええ子やのに。なんでやろなぁ」
「仕事ばっかりしてるからやで」
「そうそう、もっと遊ばんと」
「出会いなんかどこにでもあるんやから」
笑い声と酒の匂いが混ざり合い、
部屋の空気がさらに熱を帯びる。
その横で甥っ子が、
「おっちゃん、これ取って!」
と唐揚げの皿を指さしてくる。
「はいはい、落とすなよ」
皿を渡すと、甥っ子は嬉しそうに頬張った。
「この子、ほんま唐揚げ好きでなぁ」
妹が笑いながら言うと、
義理の弟が丁寧に頭を下げる。
「すみません、いつも食べすぎてしまって……」
「ええねんええねん。正月やしな」
そう返すと、義理の弟はほっとしたように微笑んだ。
「アンタもはよ子ども作りや」
「そうそう、甥っ子も遊び相手ほしいやろ」
「若いうちに動かなアカンで」
おばさんたちの声が重なり、
おじさんたちの笑い声が響き、
皿が触れ合う音が絶えず続く。
外は冬の冷たい光が差しているのに、
この部屋だけ、妙に暑いくらいだった。
その熱気の中で、
さっき公園で見た子供の姿だけが、
なぜか頭の片隅に、薄く、静かに残っていた。




