近所の公園で1
正月明けで親戚が集まる日だった。
休み中にだらけた生活を続けていたせいか、
朝早く起きるのがひどく辛い。
布団から抜け出した瞬間、身体の芯にまだ夜の重さが残っていた。
眠気眼を擦りながら、実家の二階の部屋から階段を降りる。
木の段が一段ごとにわずかに軋んで、その音がやけに耳に残った。
実家特有の、朝の冷たい空気が足元にまとわりつく。
「おはよう」
声を掛けると、父親が新聞から顔を上げて「おはよう。眠そうやな」と笑う。
母親は振り返りもせず、「ほら、早く準備手伝って」といつも通りの調子で急かしてきた。
年始の決まりみたいな挨拶を交わしながら、
まだ半分寝ている頭で適当に返事をする。
言葉が口から出ていく感覚が、どこか他人事のようだった。
昨日は夜遅くまで動画サイトを流し見していたせいで、寝るのが遅くなった。
そのせいか、視界の端がまだぼんやりしている。
急かされるまま朝飯の準備を手伝い、
湯気の立つポットからコーヒーを淹れる。
カップに注がれる黒い液体を見つめていると、
台所の空気が、ほんの少しだけ冷たく感じた。
窓は閉まっているのに、
どこか外気が混じっているような、そんな温度。
気のせいだと思いながら、
コーヒーの香りを吸い込んだ。
ササッと朝食を済ませて、洗面所で顔を洗う。
冷たい水が頬に触れた瞬間、頭の奥がようやくシャキッとした。
このまま部屋に避難しよう、
そう思いながらそっと洗面所を出たところで、
「洗濯物、乾燥機かけてきて」
と母親の声が飛んできた。
「へーい」
返事だけして部屋に戻り、洗濯物を袋に詰める。
正月の朝特有の、家の中のざわついた気配が背中にまとわりつく。
車に洗濯物を乗せ、近くのコインランドリーへ向かう。
エンジンをかけた瞬間、外の空気が思ったより冷たくて、フロントガラスの向こうが少し白んで見えた。
家を出てすぐ、いつもの通り道にある公園が視界に入る。
おや?
こんな時間に、子供がひとりで遊んでいる。
ブランコの前に立って、何をするでもなく、
ただ地面を見つめているように見えた。
周りを見ても、親の姿はない。
正月明けの朝にしては、やけに静かだ。
珍しいな、と思ったけれど、
ご近所さんの親戚の子か何かだろうと、
特に気にも留めず車を走らせた。
コインランドリーの看板が見えてくる頃には、
さっきの光景もすっかり頭から抜けていた。




