イベントで視えたもの6
レイヤーさんと別れたあとも、
胸の奥に残った違和感は消えなかった。
友人も同じように感じていたらしく、
片付けながら何度かちらっとこちらを見てくる。
「……まぁ、とりあえず飯行こか」
友人がそう言って、
機材のストラップを肩にかけ直した。
夕方の空は、
昼間よりも色が沈んでいて、
雲の端だけがわずかに赤く染まっていた。
会場を出て、駐車場の横を抜けて大通りへ向かう。
風は昼より冷たく、
アスファルトの上を転がる落ち葉が
カラカラと乾いた音を立てていた。
「どこ行く?」
「駅前の居酒屋でええんちゃう?」
そんな他愛ない会話をしながら歩く。
けれど、さっきの違和感が
会話の隙間にずっと残っていた。
信号待ちの間、
ふとスマホを開いて写真を確認する。
さっきの“ピントの合わない一枚”が夕方の光の中で、
サムネイルの中だけ妙に浮いて見えた。
「……なんやろな、これ」
思わず呟くと、
友人が横目で画面を覗き込む。
「それ、さっきの子のやつやろ? ……やっぱ変やな」
夕方の風が吹いて、
友人の声が少しだけ揺れた。
駅前に着く頃には、
街の灯りがぽつぽつと点き始めていた。
人の声、車の音、店の呼び込み。
全部が普通のはずなのに、
どこか遠くに聞こえる。
「ここ入るか」
友人が指差した居酒屋の暖簾が、
風に揺れていた。
その揺れ方が、
なぜか妙にゆっくりに見えた。
暖簾をくぐると、
外の風の音がふっと途切れ、
店内のざわめきが一気に押し寄せてきた。
その瞬間、さっきまでまとわりついていた違和感が
少しだけ薄くなった気がした。




