イベントで視えたもの2
会場に着いたのは、ちょうど昼前だった。
朝の静けさはもう薄れているのに、
昼の賑わいにはまだ届いていない、
その中途半端な時間の空気が駐車場に漂っていた。
車の列がゆっくりと進んでいて、
空きスペースを探す車が何台も同じように回っている。
湿った曇り空の下で、テールランプの赤だけが妙に目立つ。
「なかなか停めれんな……」
独り言が、車内の静けさに沈んでいく。
R&Bの低いビートが流れているのに、
外のざわつきとは混ざらず、
車の中だけ別の温度になっている。
友人に到着したことを伝えると、
すぐに既読がついて、短いメッセージが返ってきた。
「こっちも駐車場で詰んでる」
画面を見て、思わず息が漏れた。
どうやら同じように困っているらしい。
そのとき、前の車がゆっくりと動き、
その奥にぽつんと空いたスペースが見えた。
「あ、空いた」
声に出すほどのことでもないのに、
胸の奥が少しだけ軽くなる。
タイミングが良かったのか、
周囲の車も気づいていないようだった。
ゆっくりとハンドルを切り、
そのスペースに車を滑り込ませる。
タイヤが止まった瞬間、
外の湿った空気が窓越しにじわっと戻ってきた。
友人に連絡を返す。
「こっちは運良く停めれたぞー。まだ空きある、待っとくわ」
送信してから、
エンジンを切り、
車内に残ったR&Bの余韻が静かに消えていく。
昼前の空気は、
朝よりも少しだけ重く、
昼よりも少しだけ静かだった。
程なくして、友人もようやく車を停めてこちらへ歩いてきた。
後部座席のドアが開いた瞬間、
スタンドやライト、ケーブル類がぎっしり詰まった機材の山がちらっと見えた。
相変わらず、持ってくる量がえげつない。
「おいおい、雨降ったら大惨事やな」
そう言うと、友人は肩をすくめて笑った。
「お前がいるから天気は持つだろ?」
軽口が、昼前の湿った空気にふわっと溶ける。
そのやり取りだけで、久しぶりに会った感じが少し薄れた。
二人で並んで歩き出す。
駐車場のアスファルトは、雨が落ちる前の独特の匂いを含んでいて、
足音がいつもより少しだけ重く響いた。
受付へ向かう道は、イベントのざわつきがまだ遠くにあるような、静けさと賑わいの境目みたいな空気だった。
友人と他愛ない話をしながら、
その境目をゆっくりと進んでいった。




