ダーツの帰りに5
数分後、「お待たせね」と湯気の立つ揚げたての唐揚げ定食が届いた。
まだパチパチと油の爆ぜるような音が聞こえるほどの揚げたてで、大盛りの白米に、出汁の効いた味噌汁、小鉢がついたいつもの定食だ。
さっきの影のことなどすっかり頭から抜け落ちて、唐揚げに箸を伸ばす。
噛んだ瞬間に肉汁が広がって、思わず肩の力が抜けた。
しっかり食べたおかげで、気分もだいぶ切り替わった。
「ふぅ……」
人心地ついたところで、おばちゃんが
「相変わらずいい食べっぷりね。気持ちがいいわー」
と笑いながら声をかけてくる。
「美味しいからですよ」と返すと、
混んできた店内を見て、そろそろ出ることにした。
外に出ると、もう空はすっかり暗くなっていた。
秋の夜特有の、少し物悲しい空気が肌に触れる。
人肌恋しい季節が来たな、とぼんやり思いながら車に乗り込む。
エンジンをかけて、シートに体を預けたとき、
ふと、先ほどの影のことが頭をよぎった。
あれは、なんだったんだろう。
見間違いだと思っていたはずなのに、
唐揚げを食べている間は完全に忘れていたはずなのに、今になって、妙にその輪郭だけが思い出される。
街灯の下に立っていたような、あの小さな影。
考えても仕方ないと分かっていながら、
ほんの少しだけ胸の奥にざらつきが残ったまま、
車を家へと走らせた。




