ダーツの帰りに4
近くの行きつけの定食屋へ向かうことにした。
家に帰って作る気力はないし、惣菜を買って帰るのも今日はどうにも気が乗らない。
六時間も投げてこの結果だ。せめて飯くらいは外で食って帰りたい。
車を走らせると、秋の夜の匂いが窓の隙間から入り込んできた。
昼間より冷えてきているが、冬ほど刺さらない。
街路樹の葉が風に揺れて、街灯のオレンジ色に照らされていた。
定食屋は家から車で五分ほどの場所にある。
昔からよく通っているせいで、顔はすっかり覚えられている。
店の前に車を停め、ドアを閉めると、油の匂いがふわっと漂ってきた。
引き戸を開けると、いつものおばちゃんが
「いらっしゃい」と声をかけてくれる。
その声を聞くと、なんとなく肩の力が抜ける。
カウンターに通され、メニューを開く。
注文を待っているおばちゃんが、じっとこちらを見て言った。
「なんかあった? 浮かない顔してるわよ」
少し照れながら、
「趣味の方が上手くいかなくて」と答える。
「そりゃいかんね。今日はしっかり食べていきなさい」
と笑いながら言われ、大盛り唐揚げ定食を頼んだ。
「あいよ」と愛想よく返事をして、おばちゃんは奥へ戻っていく。
店内はそれなりに混んでいて、テレビの音と食器の触れ合う音が重なっていた。
湯気の立つ味噌汁の匂いが、カウンター越しにふわっと漂ってくる。
ふと、入口の方から視線を感じた気がして、そちらを見る。
扉のガラス戸の外に、子供のような影が立っているように見えた。
街灯の光がガラスに反射して、その影だけが妙に輪郭を持っている。
一瞬、こちらを見ているようにも思えた。
おや? この時間に子供だけで来るものかな。
そう思って瞬きをした次の瞬間には、影はもうなかった。
風で揺れた木の影か、通りすがりの誰かの残像かもしれない。
……目が疲れているだけだろう。
そう自分に言い聞かせ、唐揚げが来るのを静かに待った。




