ダーツの帰りに3
このまま続けるか少し悩む。
結果は芳しくない。もう少し無理をすれば、感覚が戻ってくる気もする。
けれど、右腕に鈍い痛みが走った。
その瞬間、やめておこうと決めた。
明日は仕事だ。無理をして腕が上がらないなんてことになったら困る。
「はぁ……」
小さくため息をついて、ダーツを片付ける。
ケースの金具がカチリと鳴る音が、やけに静かに響いた。
一階の受付で会計を済ませ、店を出る。
外の空気は昼より少し冷えていて、秋の夕方らしい匂いが混じっていた。
駐車場へ向かう途中、視界の端で何かが揺れた。
布切れのような、白いものが風にひらついた気がした。
「ん?……なんかあったか?」
思わずそちらを見るが、何もない。
街灯の下に落ち葉が数枚あるだけだ。
少し待つと目の乾きもなくなり、特に問題ないように感じた。
まぶたの裏に残っていた重さも消えて、視界がすっと澄む。
さて、帰るか。
そう思ったところで、時間はちょうど晩飯時だ。
男の一人暮らしだし、帰って作るのも正直面倒くさい。
かといって惣菜を買って帰るのも、皿に移したり片付けたりするのが妙に手間に思える。
それに、六時間も投げてこの結果だ。
なんとなく、このまま家に帰ると余計にモヤモヤしそうだった。
「……飯くらい、外で食うか」
独りごちて、エンジンをかける。
車内に秋の夕方の空気が少し入り込み、ほんのり冷たい匂いが混じった。
レゲエのプレイリストが再生され、低いビートがゆっくりと車内に広がる。
フロントガラス越しに見える空は、もうすっかり夕焼けの色で、街路樹の葉がオレンジ色に照らされて揺れていた。
ふむ……液晶パネルのダーツ台を長時間凝視しすぎたかもしれない。
目が乾いて、焦点がぶれたのだろう。
車に戻り、シートに深く座り込む。
目薬をさして、まぶたを閉じる。
じわっと薬液が馴染んでいく感覚が心地よくて、しばらくそのまま休むことにした。
外では、風が落ち葉を転がす音がかすかに聞こえた。
秋の夕方の静けさが、車内にゆっくり染み込んでくる。




