ダーツの帰りに2
ネットカフェに到着すると、珍しく誰もダーツをしていなかった。
土日の昼間に空いているのはあまり見ない。
少しだけ肩の力が抜ける。
入り口の自動ドアが開くと、外の乾いた秋の空気とは違う、ほんのり暖かい店内の匂いがふわっと鼻に入った。
この温度差が、季節の境目らしくて好きだ。
お気に入りの台に登録を済ませ、軽く鼻歌をしながら二階へ上がる。
階段の途中で、ビリヤード台の方からカップルの笑い声が聞こえた。
玉がぶつかる乾いた音と、二人の柔らかい会話が混じって、秋の午後らしいゆるい空気が漂っている。
ドリンクバーで温かいお茶を入れる。
湯気が立ち上って、手のひらに少しだけ湿り気が移った。
そのまま席に戻り、カードをセットする。
まずはCOUNTUPから始めることにした。
久しぶりに投げるせいか、最初の数投はひどかった。
ダーツはバラけて、狙った場所にまったく集まらない。
「……ああ、こんなもんか」
悔しさというより、身体がまだ思い出していない感じだ。
それでも丁寧に投げていくうちに、少しずつ感覚が戻ってくる。
投げて、刺さった場所を確認して、また投げる。
ただそれだけを、黙々と繰り返した。
どれくらい時間が経っただろう。
ふとスマホを見ると、六時間も投げ続けていた。
「……やりすぎたな」
そう呟いて、テーブルに置きっぱなしだったお茶を口にした。
すっかり冷めていて、最初に飲んだときの香りはもうほとんど残っていない。
そのぬるさが、六時間という時間の長さをはっきり教えてくれた。
肩の奥にじんわりと疲れが出てくる。
窓の外の夕方の光が、秋らしく少しだけ赤みを帯びていた。




