視えちゃったもの2
喫茶店に着くと、友人はすでに窓際の席で待っていた。
いつもなら俺に気づいた瞬間に手を振ってくるのに、
今日はカップを両手で包んだまま、落ち着かない様子で視線を泳がせている。
「おう、悪い。待った?」と声をかけると、
彼は顔を上げて、少しだけ肩の力を抜いたように笑った。
「いやいや、俺こそ急に呼び出してもうて。すまん」
「まあまあ、せっかくの休みやし。とりあえず座るわ」
そんな軽い挨拶を交わしてから、
俺はホットコーヒーを注文し、上着を椅子の背にかけて向かいに腰を下ろした。
店内は昼下がりらしいゆったりした空気で、
コーヒーの香りが静かに漂っている。
窓の外では、買い物帰りらしい親子がゆっくり歩いていくのが見えた。
注文したコーヒーが運ばれてくると、
彼はようやくカップから手を離し、深く息を吐いた。
「いやな、ちょっと聞いてほしいことがあってさ」
普段なら「聞いてくれや、めっちゃおもろいで」とか、軽口混じりで話を切り出すのに、今日は妙に慎重だ。
「まあ、落ち着いてからでええよ」と俺が言うと、
彼は小さくうなずき、スプーンでゆっくりコーヒーをかき混ぜた。
「そんな大した話ちゃうねんけどな。
ちょっと俺でも処理しきれんというか……説明しづらいというか」
言葉を選ぶように、ゆっくりとした口調だった。
俺はコーヒーを一口飲み、カップを置いて姿勢を整える。
こういう時は、相槌も最小限にしておくのがいい。
彼は急かすと途端に言葉が詰まるタイプだ。
しばらく黙っていた彼は、視線をテーブルに落としたまま、
ぽつりと話し始めた。
「昨日の夜な……ちょっと変なことがあって」




