夜の駐車場1
これは、もう十年以上前の話になる。
その日は夜勤明けで、一睡もしていなかった。
仕事が終わってからそのままイベントに参加して、
気づけば夜遅くまで飯を食っていた。
帰ろうとした時には、駐車場の出庫時間をとっくに過ぎていた。
どうしようもない。
本当はダメなんやけど、車の中で寝るしかなかった。
あの時、眠気は限界で、頭がぼんやりしていた。
けど、車を出せる時間は完全に過ぎている。
一度帰ることもできず、仕方なく立体駐車場に戻ることにした。
誰もいない立体駐車場を、エレベーターで上がっていく。
エレベーターの扉が開いた瞬間、空気が変わった。
外はまだ人の気配があったのに、
上の階は、まるで別の場所みたいに静かだった。
眠気で感覚が鈍っていたはずなのに、
その静けさだけは妙に鮮明で、
足音がやけに響いたのを覚えている。
「こんなに静かやったっけ」
そう思いながら、自分の車のある階へ歩いていった。
ザリッ、ザリッ。
歩くたびに、靴底の滑り止めが擦れる音がやけに響いた。
普段なら気にも留めないような音なのに、
この時だけは、立体駐車場全体に広がっていくように聞こえた。
車のロック解除音も、いつもより大きく感じた。
ピッという短い電子音が、空間の奥まで跳ね返っていく。
自分以外、誰もいないはずの駐車場で、
音だけが妙に生々しく反響する。
眠気でぼんやりしていたはずなのに、
その“音の大きさ”だけは妙に鮮明だった。




