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刀の残り香5

トイレに入ると、

さっきまで我慢していた吐き気が一気に込み上げてきた。

個室に駆け込んで、

もう耐えられずに胃の中のものを吐いてしまった。

しばらく、

冷たいタイルの壁に手をつきながら呼吸を整える。


あの刀は、なんやったんやろ。


頭のどこかでそう思いながら、

口をゆすぎ、何度か深呼吸をして落ち着かせた。

鏡を見ると、

顔色が少し悪い気がしたが、

匂いはもう感じなかった。

展示室に戻ると、

友人が心配そうにこちらを見ていた。

「大丈夫か? 顔色悪いで」

「ごめんごめん。

 ちょっとお腹痛なってな。

 昨日食べすぎたみたいやわ」

軽く笑って誤魔化すと、

友人は「ええよええよ」と首を振った。

「無理せんでええからな。

 帰るか?」

「うん、ちょっと休みたいわ。

 悪いけど、今日はこれで出よか」

二人で展示室を後にし、

博物館の出口へ向かう。

外に出ると、

冬の冷たい空気が頬に触れた。

さっきまで鼻を刺していた鉄錆のような匂いは、

もうどこにもなかった。

「ほな、飯でも食いに行こか。

 お詫びに奢るわ」

「ええけど……ほんまに大丈夫なんか?」

「大丈夫大丈夫。

 なんか急に気分悪なっただけや」

そう言って車に向かう。

友人はまだ少し心配そうやったが、

それ以上は何も聞いてこなかった。

ただ、

あの刀の前に立った瞬間の匂いだけが、

鼻の奥にうっすら残っている気がした。

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