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刀の残り香4

展示室の奥へ進むと、

照明が少し落とされていて、

空気がひんやりと張りつめていた。

ガラスケースの中に、

刀が一本ずつ間隔を空けて並んでいる。

どれも磨かれていて、

光が細い線のように刃に沿って走っていた。

友人が近くの説明パネルを覗き込みながら言う。

「おお、これ結構古いな。

 室町の終わりくらいやって」

「へぇ……雰囲気あるなぁ」

「この刀、持ち主が何回も変わってるらしいで。

 戦のたびに渡り歩いたんやと」

「そんな謂れあるんやな……」

二人とも声を落として、

展示室の静けさに合わせるように話す。

次の刀へ移るたびに、

友人は「これもええなぁ」「この刃文きれいやな」と

小声で感想を漏らしていた。

そんな調子でゆっくり進んでいき、

とある一本の前に立った瞬間

鼻の奥を、

強烈な鉄錆の匂いが突き刺した。

さっき入口で感じた匂いとは比べものにならない。

乾いた鉄を削ったような、

古い血がこびりついたような、

そんな重たい匂いが一気に押し寄せてきた。

思わず息を止めて、

顔をしかめる。

友人が横で説明文を読んでいたが、

まったく気づいていない様子だった。

耐えきれず、

声が震えないように気をつけながら言う。


「……ちょっと、トイレ行ってくるわ」


友人が顔を上げる。

「え、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。

 ちょっとだけ外すわ」

そう言ってその場を離れると、

匂いは背中にまとわりつくように、

しばらく鼻の奥に残っていた。

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