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刀の残り香2

友人を乗せて駅前を出ると、

車内は暖房でちょうどいい温度になっていた。

クラシックの静かな旋律が流れているけど、

二人で話し始めると自然と音は背景に溶けていった。

「最近どうなん?」と聞くと、

友人はシートに深く座り直して言った。

「いや、仕事は相変わらずやけどさ。

 この前、久しぶりに映画観に行ってん」

「何観たん?」

「『陰のなんとか』っていうやつ。

 ホラーやねんけど、全然怖くないねん。

 でも雰囲気だけは良かった」

「雰囲気だけ良いホラーって、逆に気になるな」

「そうそう。

 なんか“何も起きへん時間”がめっちゃ長くてさ。

 途中で、これ監督寝てるんちゃうかって思ったわ」

「お前がそれ言うんかい」

二人で笑う。

信号が青に変わり、車を進める。

道路は空いていて、流れはスムーズだった。

「アニメは?」と聞くと、

友人は「ああ」と思い出したように言った。

「最近『刀剣』のやつ見返しててさ。

 今日の展示、それ見て思い出したんよ」

「なるほどな。

 刀の展示って、実物見ると全然違うよな」

「そうそう。

 写真で見るより“重さ”があるというか。

 あれは生で見んと分からん」

「分かるわ。

 なんか“空気”が違うよな」

「そう。空気。

 あれ、なんなんやろな。

 刀って、ただの鉄やのに」

「鉄やけど、鉄じゃない感じするよな」

「そうそう。

 なんか“人が触ってきた時間”みたいなんが残ってる感じ」

友人はそう言って、窓の外をぼんやり眺めた。

車は郊外の道に入り、

両側に広がる田んぼは冬の色をしていた。

遠くに白い山が見える。

「そういやさ」と友人が続ける。

「最近、趣味で木彫り始めてん」

「木彫り?また渋いな」

「いや、なんか無心になれるねん。

 削ってると、時間がゆっくりになるというか」

「へぇ。

 お前、そういうの向いてそうやな」

「向いてるかどうかは知らんけど、

 なんか“形が出てくる瞬間”が気持ちええねん」

「分かるわ。

 創作ってそういうとこあるよな」

「お前も怪談書いてるやろ。

 あれも“形が出てくる瞬間”あるんちゃう?」

「あるな。

 なんか、急に“あ、これや”ってなる瞬間」

「それそれ。

 あれがええねん」

そんな話をしているうちに、

気づけば街並みが変わり、

博物館の案内板が見えてきた。

「もう着くんか。早いな」

「話してたら一瞬やったな」

駐車場に車を入れ、エンジンを切る。

クラシックの音が静かに途切れた。

二人で外に出ると、

冬の空気がひやっと頬に触れた。

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