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カメラマンへの囁き後日譚

「俺なら!1回頻度落とすけどな」

ほんまに軽く言ったつもりだった。

冗談半分、アドバイス半分みたいな

撮影仲間は、カップを持ったまま固まった。

「……頻度、落とす?」

「うん。まぁ、様子見るって意味でな。

 別に撮るなって話ちゃうで」

「……でも、その子ええ子やし……撮影自体は楽しいし……」

「分かってるよ。お前が悪いわけちゃうしな」

俺は肩をすくめた。

「たださ、“チッ”って音がさ。

 お前にだけ聞こえるんやろ?」

「……あぁ」

「ほんなら、一回距離置いてみたらええんちゃう?

 それで音が止まるなら、なんかしら関係あるってことやし」

撮影仲間は、ゆっくりと視線を落とした。

「……でもなぁ……」

「怖いんか?」

「……正直、ちょっとな」

その言い方が、妙に素直だった。

「やろ。ほんなら余計にや。

 1回だけでも頻度落としてみ。

 それで何も変わらんかったら、また撮ればええねん」

撮影仲間は、しばらく黙ってから小さく頷いた。

「……そう、するべきなんかな」

「俺なら、そうするな」

その瞬間だけ、店内のざわつきが遠くなった気がした。

頻度落とすって話をしてから、ひと月くらい経った頃だった。

仕事終わりに、撮影仲間から急に連絡が来た。

『なぁ……ちょっと話してええか』

珍しいなと思いながら、近くのファミレスで落ち合った。

席に着くなり、撮影仲間はコーヒーを一口飲んでから言った。

「……なんか、少しマシになった気がするわ」

「お、ほんまか。音、減ったん?」

「減った……気がする。前みたいに、毎回チッて鳴る感じやなくてな。

 たまに……くらいになった」

「ほーん。ええやん」

そう言ったけど、撮影仲間の表情は微妙やった。

「でもな……完全には消えてへんねん」

「……そっか」

「頻度落としたからか、距離置いたからか……

 理由は分からんけどよ。

 前よりはマシ。でも……まだ聞こえる」

撮影仲間は、カップを両手で包んだまま、少しだけ笑った。

「なんか……“見張られてる”みたいな感じは減ったんやけどな」

その言い方が、妙に引っかかった。

「見張られてるって……誰にやねん」

「……知らん。知らんけどよ」

撮影仲間は、そこで言葉を切った。

「……まだ、終わってへん気がする」

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