魅入られた子後日譚
数日後、冬のソロキャンの友人と飲むことになった。
外は冷え込んでいて、店の暖かさがやけに心地よかった。
ビールを一口飲んだところで、俺はふと思い出したように切り出した。
「なぁ……前に話してくれた、ソロキャンの時の女の子なんやけどさ」
友人が箸を止めて、こちらを見る。
「黒いロングヘアで……目を見張るくらいの美人じゃなかったか?少し切れ長の目で、色白の」
友人は「あ?おぅ、そうやぞ」と軽く頷いた。
その瞬間、胸の奥がざわついた。
○○ちゃんの姿が頭に浮かぶ。
俺は少し思考の海に沈んでいった。
友人は不思議そうにこちらを見ていたが、不意に軽く肩を叩いてきた。
「おい、なんかあったんか?」
その声で思考から引き戻される。
「いや……まぁ、ちょっとな。すまんね。
ちょっと気になる話があっただけなんだよ」
そう言うと、友人は「ああ」と頷き、何か思い出したように言った。
「そういやな。お前に言われた次の日に、行った神社の宮司さんから言われたんや」
「なんて?」
「その女の子とは、連絡先交換してても連絡はしないように、って。なんかあるんやろな……。ちょっと残念な気もするけどな」
そう言って、友人はビールを飲んだ。
その横顔を見ながら、背筋に悪寒が走った。
宮司さんは、全部知っていたのではないか。
そう思えてならなかった。
店を出ると、夜の空気が冷たかった。
友人と別れ、ひとりで歩き出す。
ふと、背後で足音がした気がした。
振り返っても、誰もいない。
気のせいだと思いたかった。
……なのに、妙に空気が冷たかった。
スマホが震えた。
宮司さんからの短いメッセージ。
「しばらくは……気をつけてください」
理由は書かれていなかった。




