魅入られた子4
○○ちゃんは、ゆっくりと、ぽつりぽつりと言葉を落とし始めた。
「初めは……キャンプ場に着いてから、
視線が……ずっとついて回って……。
それは……なんとか……なったんですけど……」
そこで一度、言葉が途切れた。
コーヒーのカップを持ち上げる手が、わずかに震えている。
一口だけ飲んで、深呼吸するように小さく息を吐いた。
そして、また話し始める。
「キャンプから帰ってから……家の前に、泥のついた……子供くらいの……裸足の足跡がついてたり……家の中でも……なにかに……見られてる感じが……
ずっと……止まらないんです……」
声は小さいのに、妙に耳に残った。
静かに聞いていた俺は、少し間を置いてから言った。
「それは……ずっとなの?」
○○ちゃんは、顔を上げずに、小さくこくりと頷いた。
その頷き方が、どこか“諦め”に近いものに見えた。
横を見ると、女友達が心配そうに俺を見ていた。
助けを求めているような、
でも自分でもどうしていいかわからないような、
そんな表情だった。
ここまで聞いたところで、女友達が俺の方を向いた。
「で、あんた……こういう話、好きで集めてんやろ?
なんか解決法とか知らんの?」
半分冗談みたいな言い方なのに、声の奥に焦りが混じっていた。
「いや、俺は……怪奇譚集めて聞くだけで、
解決はしてないんよ」
そう言うと、女友達は眉を寄せた。
「まぁ、系統分けみたいなのはするし、
自分なりに解釈はするけどさ」
女友達は、大きく溜息をついた。
「いやいや……何とかならん?」
その“何とか”の部分に、
自分でもどうしていいかわからない必死さが滲んでいた。
「うーん……」
俺は少し考えてから言った。
「今の話だけだと……どうにも……」
言いながら、○○ちゃんの方を見る。
彼女はカップを両手で包むように持ったまま、
視線を落としていた。
その肩が、さっきよりも小さく震えているように見えた。




