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年末のビジネスホテルにて6
あまりの不可解さに、とりあえず寝てしまおうと思った。
どっちにしても、もう寝ないといけない時間だ。
こういうのは無視に限る……。
そう思うと、意外なほどすぅっと眠りに落ちていった。
翌朝、6時半頃に目が覚めた。
特に身体に異常はない。頭も重くないし、寝不足の感じもない。
ただ、部屋が妙に暗く感じた。
カーテンを開けた瞬間、息が止まった。
窓ガラスの一部に、
人差し指で突いたような跡と、
拳を握って側面で叩いたような跡が、
点々と残っていた。
外側に。
高層階で、ベランダも外廊下もない。
人が立てる場所なんてどこにもないはずの“外側”に。
ぶるっと震えがきたが、
考えるより先に身体が動いていた。
すぐにチェックアウトできるように荷物をまとめ、
予定よりずっと早く宿を後にした。
外に出ると、朝の空気は刺すように冷たかった。
それなのに、背中だけがじんわりと汗ばんでいた。




