年末のビジネスホテルにて2
店に入ると、カウンター席がちょうど一つ空いていた。
年末だからか、店内は賑やかで、湯気と出汁の匂いが混ざっている。
奥のテーブルでは常連らしき人たちが笑い合っていて、厨房からは包丁の音が一定のリズムで響いていた。
カウンターに腰を下ろし、とりあえず飲み物を頼む。
次の日は移動があるから、酒は控えておこうと思い、
「ウーロン茶で」とだけ伝えた。
すぐに突き出しが出てきた。
小鉢に盛られた出汁の効いたオカラと、
大根と鶏肉の煮物が湯気を立てている。
どちらも優しい味で、胃が落ち着く。
適当に酒の肴を数品と白ご飯を注文し、
おしぼりで手を拭いて一息ついたところで、
いきなり隣の席から声が飛んできた。
「兄ちゃん、一人旅か?」
振り向くと、だいぶ出来上がった様子のおじさんが
ニヤッと笑いながらこちらを見ていた。
顔は赤いけど、目は妙にしっかりしている。
「俺も一人なんだよ、へへへ」
酔っている割に、声はよく通る。
面白そうな人だなと思いながら、
「えぇ、ふらり一人旅なんですよ」
と返すと、おじさんは膝を叩いて笑った。
「兄ちゃん、面白いな。孤独のグルメみてぇじゃん。
若ぇのにおもろいなぁ」
そんなやり取りをしていると、
奥から女将さんが料理を持ってやってきた。
「○○さん、またお客さんに絡んで。やめてくださいよ」
「えぇー、話し相手になってもらってるだけじゃねぇかよー」
女将さんは呆れたように笑いながら皿を置き、
おじさんは肩をすくめてまた酒を飲む。
(あぁ、地元のちょっと酒癖の悪い常連さんか)
そう思いながら料理に箸をつける。
確かに美味しい。噂どおりだ。
するとまた、おじさんが覗き込むようにして言ってきた。
「美味いか?美味いだろ?」
絡んでくるけど、どこか憎めない。
俺も一人だし、こういう人と話すのも悪くない。
そんな気持ちで、他愛ない話を続けていた。




