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久しぶりの遠出5

血天井を眺めてから聞こえたあの音が、

じわじわと怖さに変わっていくのを感じた。

もう一度、御本尊に目を向ける。

そこには、先ほどと変わらず神々しい仏像が静かに立っていた。

その変わらなさが、逆に安心をくれた。

深く一礼して、そっと本堂を後にすることにした。

廊下をゆっくり歩く。

木の軋む音が、さっきよりも少し大きく聞こえる気がした。

受付の方へ戻る途中、

軋む音が複数に増えたように聞こえた。

思わず振り返る。

だが、誰もいない。

胸の奥が、ほんの少しだけ冷たくなる。

受付に戻ると、

時計を見る限り、滞在時間は三十分ほどだった。

受付をしてくれたお坊さんが、

ご住職と話している途中でこちらに気付き、声をかけてくれた。

「いかがでしたか?」

「厳かな時間でした。

ただ……」

と言い淀んだところで、

ご住職が受付のお坊さんに向かって尋ねた。

「こちらのお客様は、どれくらい本堂にいらっしゃったんだ?」

「えっと……おそらく二十分から三十分くらいです」

そう答える声が、妙に耳に残った。

ご住職は

こちらに聞こえるか聞こえないかの声で、ぽつりと呟いた。

「……長いな」

「えっ?」

思わず聞き返すと、ご住職はすぐににこやかな表情に戻った。

「お時間はありますか?」

「はい、ありますが……どうされましたか?」

すると、ご住職は少しだけ言葉を選ぶようにして続けた。

「いや、あの本堂に少し長くいらっしゃったんでしょう。 少し冷えると思いましてね。

良ければ、私が読経する時間なのですが……

その間、こちらのストーブで温まって行かれてはと思いまして」

受付のお坊さんも続けて言った。

「お茶をご用意しますね」

言われるがまま、

ご住職の読経を聞いて帰ることになった。

断ることもできたが、

特に予定を決めていない旅だ。

それに、ご住職自らの読経など、

そうそう聞けるものでもない。

そう思い、残ることにした。

ただ…

ご住職の「長いな」という言葉が、

胸のどこかに小さく引っかかったままだった。

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