久しぶりの遠出4
目が慣れるまで、少し時間がかかった。
薄明かりの中でも、御本尊は神々しく、輪郭が柔らかく浮かび上がって見えた。
横には、この御本尊の謂れや、本堂の造りについての説明書きがあった。
天井は血天井になっていると書かれていたが、
暗さのせいで、そこまではよく見えない。
静かな暗がりの中で、
仏像と自分だけが取り残されたような空間だった。
天井の説明を読んでいるうちに、
歴史的な興味もあって、ゆっくり見てみたいという気持ちが湧いてきた。
自分の呼吸音以外、何も聞こえない。
その静けさの中で、ゆっくりと天井を見上げる。
目が慣れてくるにつれて、
ぼんやりと天井の染みが浮かび上がってきた頃
コッ…
不意に、床を踏むような音がした。
「ん?」
反射的にそちらへ意識が向く。
お坊さんが入ってきたのかと思ったが、
足音はそれきり続かない。
気のせいか、と自分に言い聞かせながら、
もう一度天井に視線を戻す。
薄暗がりの中で、
染みの形がゆっくりと輪郭を持ち始める。
木造の本堂の冷たさの中、じっと天井を眺めていた。
染みの輪郭がゆっくりと浮かび上がってくるのを、
ただ黙って追いかける。
どれくらいそうしていたのか、
時間の感覚が少し曖昧になっていく。
そのとき、ふと気付いた。
さっき聞こえた足音のような音に、
金属が擦れ合うような、細い音が混ざっている。
カチ…
カラ…
とても小さいのに、
静まり返った本堂では妙に鮮明だった。
木の軋みとは違う。
風でもない。
お坊さんの足音とも少し違う。
耳を澄ませるほど、
その金属音が、どこか近くで鳴っているように思えた。




