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久しぶりの遠出3

本堂を目指して、ゆるい坂道を上がっていく。

途中、遠くの方から微かに人の声が聞こえてきた。

誰かがいると思うと、少しだけ安心した。

耳を澄ませると、それは読経の声だった。

どうやら、朝のお勤めの最中らしい。

少し早く着きすぎたようだ。

本堂の前で立ち止まり、外で静かに待つことにした。

読経の声は、山の空気に溶けるように続いていたが、

しばらくするとふっと途切れた。

ほどなくして、数名のお坊さんが本堂から出てこられた。

袈裟の色が朝の光に淡く揺れている。

「おはようございます。参拝の方ですか?」

声をかけられ、軽く会釈する。

「おはようございます。朝早くすみません。参拝できますか?」

自分の声が、思ったより静かに響いた。

すると、お坊さんは丁寧に、

「大丈夫ですよ。参観料はかかりますが、よろしいですか?」

と確認してくれた。

「大丈夫です」

そう答えて参観料を納める。

「では、こちらへどうぞ」

案内に従って歩くと、お寺の成り立ちや建立の経緯を、ゆっくりと、丁寧に説明してくれた。

朝の静けさの中で聞く話は、どこか現実よりも柔らかく響いた。

「奥の御本尊は撮影できませんので、ご了承ください」

そう言われ、軽く頷いて本堂の奥へ向かう。

廊下を進むと、木の床が軋む音が小さく響いた。

古い建物ならではの音で、

その響きが、静謐な空間にゆっくりと溶けていく。

足を運ぶたびに、

自分の存在だけが少しだけ際立つような気がした。

本堂は、境内の奥まった場所にあった。

参道から少し外れたところに建っていて、

入口は人ひとりがくぐれるくらいの小さな戸口だった。

身をかがめて中に入ると、

ぼんやりとした明かりがあるだけの薄暗い空間が広がっていた。

灯りはついているのに、どこか影の方が勝っているような、そんな静けさだった。

足を踏み入れた瞬間、

外で感じていた音が、さらに遠のいた気がした。

さっきまで聞こえていたはずの自分の足音さえ、

少しだけ輪郭がぼやける。

呼吸の音だけが、やけに近く感じられた。

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