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久しぶりの遠出2

旅路は、ところどころ渋滞があったものの、全体としては順調だった。

雨も途中でやみ、雲の切れ間から淡い晴れ間がのぞいていた。

ワイパーの音が止むと、車内が急に静かになって、

思わず鼻歌が出た。

サービスエリアで給油を済ませ、高速を降りて山道へ入る。

道幅が狭くなり、カーブが増える。

それでも、思っていたより到着は早くなりそうだった。

地元の桜はもう散ってしまっていたけれど、

目的のお寺の山門には、まだ桜が残っているらしい。

散り際の柔らかい色が、風に混じって揺れているのが遠目にも分かった。

車を停めてエンジンを切る。

静けさが戻ると、外の空気が思ったより冷たかった。

ドアを開けて一歩踏み出すと、

春の終わりとは思えないほど、少し肌寒かった。

山門の桜は、ちょうど風に乗って綺麗な花吹雪になっていた。

思わず足が止まる。

「ほぉ…」と声が漏れたのは、自分でも少し驚くくらいだった。

散り際の桜は、満開よりも静かで、

どこか時間がゆっくり流れているように見えた。

スマホを取り出して、何枚か撮る。

画面越しに見る桜は、肉眼よりも少し淡くて、

それがまた良かった。

シャッター音が山の空気に吸い込まれていく感じがして、

しばらくその場に立ち尽くしていた。

ふと我に返り、山門の前で軽くお辞儀をしてからくぐる。

一歩入っただけなのに、空気が変わった気がした。

お寺の中は、驚くほど静謐だった。

朝が早いせいもあるのだろうけれど、

それにしても静かすぎるくらい静かだった。

耳を澄ませても、

自分の足音と、服が擦れる音以外は何も聞こえない。

風の音も、鳥の声も、どこか遠くに置いてきたようだった。

歩くたびに、

その静けさの中に自分の存在だけが浮いているようで、少しだけ背筋が伸びた。

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