冬のソロキャン5
「ふと顔を上げたらな、いつの間にか向かいのサイトにキャンパーさんがいたんだよ」
友人はそう言って、串を一本つまんで軽く振った。
「髪の長い、ちょっと目を引くくらいの美人さんだったんだけどよ。
すげぇオタオタしながら設営してんだよ」
「お前、そういうのすぐ見つけるよな。
で、声かけたんだろ?どうせ」
「いや、まぁ……俺の方はもう設営終わってたし、近くにいるから手がいるかなって思ってよ」
「はいはい、優しい男アピールね」
「違うって。ほんまに困ってそうやったんよ」
友人は少しだけ真面目な顔になり、話を続けた。
「んでよ、“大丈夫ですか?ひとりで行けますか?”って声かけたんだよ。
そしたら、泣きそうな顔で“なんとか…頑張ります…”って返ってきてさ」
「お前、完全にナンパやん。
浮ついた話で、惚気か?」
俺が茶化すと、友人は即座に眉をひそめた。
「そんなんじゃねぇよ。
そんな話なら電話で済むわ」
拗ねたように口を尖らせるその顔が、逆に妙に真剣で、 俺は慌てて両手を軽く上げた。
「ごめんごめん。ちゃんと聞くから続き頼むわ。
ほら、俺も興味あるし」
「……まぁええけどよ」
友人はビールを一口飲み、少し落ち着いたように息を吐いた。
「でな、“俺、設営終わってるので良かったらお手伝いしますよ?”って言うて、
テントの設営と、ほかの細かい準備も手伝ったんだよ」
「優しいなぁ。
で、その美人さんは?喜んでたん?」
「……喜んでたっちゃ喜んでたけどよ」
「けど?」
「なんか……ずっと落ち着かん感じやったんよな。
俺が近くにいても、なんかこう……周り気にしてるっていうか」
友人はそこで一度言葉を切り、
串を皿に戻しながら、少しだけ視線を落とした。
「その時は“初めてのキャンプで緊張してんのかな”くらいに思ってたんだけどよ……
今思えば、あれ……なんか違ったんよな」
声のトーンが、ほんの少しだけ低くなった。




