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冬のソロキャン2

店の中は外と違い、暖房がしっかり効いていた。

狭い店内にはタバコの匂いと、焼き鳥の香ばしい匂いが混ざり合って漂っている。

金曜の夜で満席。二人がけの小さなテーブルに通され、上着を脱いで一息ついた。

友人はビール、俺は烏龍茶を頼む。

お通しのキャベツが置かれると、友人はそれをつまみながら、ビールをジョッキの四分の一ほど一気に空けた。

「ぷはぁ……うめぇ。やっぱ仕事終わりのビールは正義やな」

「お前、仕事中も飲んでんじゃねぇの?」

「飲んでねぇよ。飲んでたら今頃クビやわ」

そんな軽口を叩きながら、串の盛り合わせと、酒の肴になりそうなものを二、三品注文する。

注文が落ち着いたところで、俺は昼休みに感じた違和感をそのままぶつけた。


「でさ。お前から、この時期の週末に飯の誘いなんて、かなり珍しいじゃん。なんかあったの?」


友人はキャベツをバリバリ噛みながら、少しだけ視線を落とした。

「まあ……ちょっとな。不思議な体験というか……怖い体験というか……そんな感じのことがあってさ」

「怖い体験?お前が?

 お前、山で熊と鉢合わせても“あ、どうも”って言いそうなタイプやん」

「いやいや、熊は無理やろ。俺でも逃げるわ」

「逃げれるんか?」

「逃げれるかどうかは知らんけど、逃げようとはするわ」

「いや、そこは頑張れよ」

そんなやり取りをしながらも、友人の表情はどこか落ち着かない。

笑ってはいるが、目の奥だけが笑っていない。

「で、何があったんだよ。

 この寒い時期にキャンプ行かないなんて、お前にしては事件だろ」

「それよ。それが原因なんよ」

「原因?」

「うん。こないだのソロキャンでな……ちょっと、これはお前に話しといた方がええかなって思って」

「いやいや、俺に聞かせるためだけにキャンプ休んだんか。

 ハードル高ぇ話やん、それ」

「いや、違う違う。お前に話したら、なんか整理つくかなって思って」

「俺、カウンセラーちゃうぞ?」

「知っとるわ。お前に相談したら余計ややこしくなるのも知っとる」

「おい」

「でもまあ……なんか、話しときたかったんよ。

 あれはちょっと……一人で抱えとくの嫌やった」

その言い方が、妙に引っかかった。

普段なら“ネタできたわ!”くらいのテンションで話す男だ。

それが、こんなに歯切れ悪い。

「そんな深刻なん?」

「深刻ってほどでもないけど……まあ、聞いたら分かるって」

友人はそう言って、またビールを一口飲んだ。

その喉の動きが、どこかぎこちなく見えた。

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