子供の失敗11
息子くんは、
両親の前に立つと、
さっきまでの無邪気さが嘘みたいに消えていた。
「……あのな……」
おずおずと話し始めたその瞬間、
友人が椅子を軋ませて立ち上がりかけた。
「お前、それ——」
声が荒れかける。
俺はすぐに手を伸ばし、
友人の肩を押さえた。
「約束やろ。
最後まで話、聞きや」
友人は歯を食いしばり、
しばらく沈黙したあと、
小さく「……わかった」と言って座り直した。
息子くんは怯えながらも、
勇気を振り絞って話し続けた。
「……1週間前に……友達と……
近くのお稲荷さんで……コックリさん、やった……
それから……夜に……変なこと、するようになって……
でも……怒られるの怖くて……言えんかった……」
話し終えた瞬間、
リビングの空気が一気に沈んだ。
友人は両手で顔を覆い、
奥さんは口元を押さえて震えていた。
「……どうすればええんや……」
「……わからん……」
二人とも、
完全に途方に暮れていた。
俺は深く息を吸い、
スマホを取り出した。
「とりあえずな。
知り合いの宮司さんに連絡してみるわ」
事情を説明すると、
電話の向こうで宮司さんは短く息を呑み、
すぐに言った。
「今から向かいます。
その子を一人にしないようにしておいてください」
電話を切り、
友人夫婦に向き直る。
「宮司さん、すぐ来てくれるって。
事情も全部話した。
ここで待とう」
友人は深く頷き、
奥さんは涙を拭きながら息子くんの肩を抱いた。
俺は玄関の方へ視線を向ける。
この家の空気が、
さっきよりもさらに重くなった気がした。
玄関のチャイムが鳴ったのは、
時計が22時を少し回った頃だった。
思ったより早い。
扉を開けると、
斎服をきちんと着込んだ宮司さんが、
夜気の中に静かに立っていた。
白い衣が、
家の前の薄暗さの中でやけに際立って見える。
「遅い時間にすみません。
荷物を車から下ろしたいので、手伝っていただけますか」
落ち着いた声だった。
「わかりました。 お世話になります」
そう言うと、宮司さんは穏やかに微笑んだ。
「大丈夫ですよ。
とりあえず、お話を伺う限り……なんとかなるでしょう」
その“なんとかなる”の言い方は、
不思議と胸の奥の緊張を少しだけ和らげた。
だが、続く言葉は静かに重かった。
「ただし、
息子さんには、少し怖い思いをしていただくことになります」
後ろで聞いていた友人夫婦が、
同時に小さく息を呑む。
俺は荷物を受け取りながら、
短く頷いた。
「……覚悟はしてます」
宮司さんはその言葉を確認するように一度だけ頷き、
家の中へ視線を向けた。
「では、始めましょう」
その声は、
夜の空気を切り替えるように静かで、
しかし確かな力を持っていた。




