表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/294

子供の失敗10

俺は息子くんの正面に座り、

逃げ場を作らないでも、追い詰めないでもない距離で目線を合わせた。


「君をな、1人前の男として話をしようと思う」


息子くんは少し驚いたように目を瞬かせた。

“子ども扱いされてない”と分かったんだろう。

「だから、嘘つかず、隠さず話してくれるか?」

息子くんは唇を噛んで、

視線を落としそうになって、

でも必死にこらえて俺の目を見た。

しばらく悩んだあと、

小さく、でもはっきりと頷いた。


「……うん」


俺はゆっくり続けた。

「まず、率直に教えてほしい。

1週間くらい前にな、なんか変なことしてないか?

やったらアカンって言われてるようなこととか」

息子くんは一瞬で怯んだ。

目が泳ぎかけて、

でもまた俺の目を見ようとする。

その葛藤が、この子の誠実さを物語っていた。

俺は急かさず、ただ待った。

やがて息子くんは、おずおずと口を開いた。


「……おっちゃん。

実はな……1週間前に、友達と……

近くのお稲荷さんで……コックリさん、やった……」


声が震えていた。


「それから……

お父さんが言ってたみたいな……

変な行動、するようになって……

でも……怒られるの怖くて……言えんかった……」

俺は息子くんの肩にそっと手を置いた。


「そうか……そら怖かったな。

でもな、ちゃんと言えたのはほんまに偉い。

1人前の男のすることや」

息子くんは涙をこらえるように目を閉じた。

「だからな、

ちょっとお父さんとお母さんに、

自分の口で話そか」

息子くんは不安そうに顔を上げる。

「……怒られる?」

「怒られへんように、

おっちゃんも一緒におる。

ついてったるさかい」

息子くんは小さく頷いた。

「……うん」

その“うん”は、

覚悟を決めた 1人前の男の声 だった。


息子くんと一緒に階段を降りると、

リビングでは夫婦が並んで座っていて、

こちらを心配そうに見ていた。

息子くんの表情を見て、

何かを察したように奥さんが息を呑む。

俺は二人の前に立ち、

落ち着いた声で切り出した。

「話、聞いたよ。

ただな、ひとつ二人に約束してほしいことがある」

夫婦は同時にこちらを見る。

「この子な、ちょっと“やったらアカンこと”はやっとる。

でも、それをちゃんと自分の口で話してくれた。

だから…」

俺はゆっくりと言葉を区切った。

「この子の話を、最後まで遮らずに聞いてやってほしい」

奥さんが不安そうに唇を噛む。

友人も腕を組んだまま、視線を落とした。

「それとな、怒る前に俺が話する。

“怒ること”と“叱ること”は、

ちょっと俺に預けてくれんか?」

友人はしばらく黙って考えていた。

奥さんと目を合わせ、

小さく頷き合う。

そして友人が言った。

「……わかった。

お前がそこまで言うなら、ちゃんと叱ってくれるんやろ。

お前を信じて最後まで聞くし、怒るのも預ける。

ただ、俺らの前で叱ってくれ。

納得できれば、それ以上は怒らん」

「約束する」

俺がそう言うと、奥さんも静かに頷いた。

場の空気が整ったのを確認してから、

俺は息子くんの肩に手を置いた。


「なあ、ちゃんと話せるな?」


息子くんは少し緊張した顔で、

でもしっかりと頷いた。

「……わかった」

そして、

小さく息を吸い込んでから

息子くんは、1週間前に起きたことを話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ