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子供の失敗9

髪を乾かし終えた息子くんが、

タオルを肩にかけたまま走ってきた。

「おっちゃん!

最近の流行り、教えたるわ!」

その無邪気さに、思わず笑ってしまう。

「おぉ、教えてやー。

学校でどんな遊び流行ってんや?」

「えっとな、えっとな……!」

息子くんは嬉しそうに喋りながら、

俺の手を引くようにして子供部屋へ向かう。

廊下を歩く間も、

「鬼ごっこはこうでな」「カードゲームがな」

と、息継ぎも忘れたみたいに話し続けている。

子供部屋に入ると、

息子くんはベッドにぴょんと座り、

こちらを見上げた。

その瞬間、

さっきまでの無邪気さがふっと消えた。

「……なあ、おっちゃん」

声のトーンが少しだけ低い。

「本当は、何しに来たん?」

俺は思わず足を止めた。

息子くんは膝を抱えながら続ける。

「お父さん、急に友達呼ぶことないねん。

なんかあったんやろ?」

その言い方は、

子供の勘の鋭さそのものだった。

息子くんはベッドの上で膝を抱え、

まっすぐこちらを見ていた。

「おっちゃん、本当は何しに来たん?」

その目は、

子供の無邪気さとは別の、

“分かろうとしている”強さがあった。

お父さんが急に友達を呼ぶことなんてない。

その違和感を、

この子なりにちゃんと掴んでいる。


これは、下手に嘘つくのは悪手やな。


そう思った瞬間、

胸の奥で何かが静かに決まった。

この子はこの子で、

しっかり現実に向き合おうとしてる。

なら、俺も大人としてじゃなく、

一人の人として向き合うべきや。

俺は息子くんの前に腰を下ろし、

目線を合わせた。

「……せやな。

君の言う通りや。

お父さんが急に呼ぶなんて、普通はないわな」

息子くんは黙って頷く。

その反応が、

“逃げたらあかん”と背中を押してくる。


「だからな、

おっちゃんも嘘つかんと話すわ」


部屋の空気が、

少しだけ静かになった。

息子くんは、

次の言葉を待つみたいに、

じっとこちらを見ていた。


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