表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
217/295

子供の失敗8

息子くんがタオルで髪を拭きながら近づいてきたので、

俺は少ししゃがんで目線を合わせた。

「そういやな、君とは赤ちゃんの時に会ってるんやで」

「えー、絶対うそやん」

即答で返ってきた。

その“うそやん”が妙に素直で、思わず笑ってしまう。

「ほんまやって。ほら」

スマホを取り出し、

昔、友人に抱っこさせてもらった時の写真を開く。

小さな手、小さな顔。

今の息子くんとは似てるけど、まだ輪郭が丸い。

「この赤ちゃんが、君や」

画面を見せると、

息子くんは「えっ……」と声を漏らし、

少しだけ照れくさそうに笑った。

「大きなったなぁ。

親戚のおっちゃんみたいやけど、ほんまにびっくりしたわ」

息子くんはタオルをぎゅっと握りながら、

「へへ……」と小さく笑う。

その反応があまりにも素直で、

この家の空気の重さを一瞬だけ忘れそうになる。

「なあ、君が大きなってるから、

おっちゃんほんま驚いたわ」

そう言いながら、

できるだけ柔らかい声で続けた。

「最近、何して遊んでるん?

よかったら教えてーや」

息子くんはぱっと顔を上げ、

嬉しそうに口を開きかけた。

その無邪気さが、

この家に漂っていた重さとはまるで別物で、

逆に胸の奥がざわついた。


写真を見て少し照れた息子くんが、

まだこちらを興味深そうに見ている。

俺は軽く笑いながら言った。

「なあ、髪ちゃんと乾かしたら、

君のお部屋でちょっとお話、聞かしてくれるかな?」

息子くんはタオルを肩にかけたまま、

ぱっと顔を明るくした。

「いいよー!」

その返事があまりにも元気で、

奥さんが思わずこちらを見る。

“大丈夫なんですか……?”

そんな表情。

俺が軽く頷くより先に、

友人が奥さんの肩に手を置いて言った。

「大丈夫や。

ちょっと話させてやってくれ」

奥さんはまだ少し不安そうだったが、

息子くんの無邪気な笑顔に押されるように、

小さく息を吐いて頷いた。

「髪、ちゃんと乾かしてからね」

「はーい!」

息子くんはタオルを振り回しながら、

自分の部屋へ走っていった。

その背中を見送りながら、

俺は友人に目だけで合図を送る。

今のところ、普通の子供や。

でも、聞いてみんと分からん。

友人は小さく頷き返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ