子供の失敗7
息子くんと奥さんが風呂場へ向かい、
リビングに静けさが戻った。
友人は深く息を吐き、
テーブルに置いたコップを指先でいじりながら話し始めた。
「……でな。
あいつ、特に何もなかったって言うんよ。
“別に”とか“知らん”とか、そんな感じで」
「ふむ」
俺は短く相槌を打つ。
「絶対そんなことないと思うんだけどよ。
なんかあったはずなんよ。
学校か、外か、家の中か……どっかで」
友人は眉間を押さえた。
「悪さしたんか?って聞いても、
“してない”の一点張りでよ。
でも、なんも言わねぇんだよな……」
「小学生やろ。
まあ、親には言いにくいこともあるやろな」
俺は椅子にもたれながら言った。
「良かったら、俺が聞いてみようか?」
友人は顔を上げ、
少し驚いたように目を瞬かせた。
「……助かる。
二人で話してくれへんか?
嫁には俺から言うから」
「ええよ」
そう返したところで、
ちょうど脱衣所の方から足音がして、
息子くんと奥さんが風呂から戻ってきた。
息子くんは髪をタオルで拭きながら、
夜に知らない大人がいるのが珍しいのか、
ニコニコしながら近づいてくる。
「おっちゃん、なんの仕事してんの?」
奥さんが慌てて「やめなさい」と言うが、
息子くんはまったく気にしていない。
俺はしゃがんで目線を合わせた。
「おっちゃんはな、工場で働いてんねん。
夜遅くにごめんな」
「ええなぁ!ロボットとかおる?」
「おるで。いっぱい動いとる」
息子くんは嬉しそうに笑い、
奥さんは苦笑しながら肩をすくめた。
この感じなら、話はできそうやな。
俺は立ち上がりながら、
友人に軽く目配せをした。
友人は小さく頷き、
奥さんに何か耳打ちする。




