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子供の失敗4

「……助かるわ。ほんまに」

その声が、さっきよりもさらに疲れていた。

何かを抱え込んでいるのが、声の端で分かる。

「で、まあ……どんな感じなんや?」

俺が促すと、

あいつはしばらく黙り込んだ。

沈黙の間に、

遠くで子供の声とも泣き声ともつかない音が微かに聞こえた気がした。

「……あのな」

ようやく口を開いた声は、

さっきよりも一段低かった。

「電話で言うの、ちょっと……しんどいわ。

説明しようとすると、なんか余計に分からんようになるっていうか」

「そうなんか」

俺は相槌を打つ。

あいつは続ける前に、また小さく息を吸った。

「……悪いんやけどさ」

その“悪いんやけど”の言い方が、

普段のあいつとはまるで違っていた。

「もし今、時間あるなら……来てくれへんか?

電話じゃ、どうにもならん気がしてきてよ」

その声は、

頼みごとというより“助けを求めてる”感じだった。

俺は一度スマホから目を離して、

壁の時計を見た。

針は20時を少し過ぎたところを指していた。

飯はもう食った。

明日は休みだ。

そして何より、

あいつの声のトーンが“今行かんとあかんやつや”と告げていた。

「……ええぞ。明日休みやしな。

今から行くわ」

そう言うと、

電話の向こうであいつが小さく息を吸う音がした。

「……ほんまに助かる。

頼むわ」

上着を手に取りかけたところで、

ふと気になって口を開いた。

「なあ、一応聞くけど……

奥さんの了承は取ったんか?」

一瞬、電話の向こうが静かになった。

その沈黙が、

“取ってない”とほぼ同義だった。


「……あ、いや……まだや。

でも、来てもらえるなら……その……

来るまでに取っとく。ちゃんと話すわ」


声の端に、

焦りと安堵が入り混じっていた。

「そうか。ならええわ。

じゃあ準備するから、ちょっと待っとけ」

「うん……頼む。ほんまに」

その“ほんまに”が、

さっきよりもさらに弱かった。

俺は通話を切り、

上着の袖に腕を通した。

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