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お茶の香りと謎のお客さん後日譚
「帰りに晩ご飯も食べて帰ろうか」
そんな話になり、帰り道にあるファミレスへ寄ることにした。
席に着いて注文を済ませると、
「そういや、今日行った古民家カフェの写真見よか」
と彼女がスマホを取り出した。
入口に向かう前に撮った写真を開いた瞬間、
二人とも言葉を失った。
画面の端
古民家の引き戸の前に、あの老紳士が立っていた。
軽く腰を曲げ、こちらに向かってピースをしている。
「……え?」
入る時、あそこには誰もいなかった。
写真を撮ったのは自分たちだけだ。
慌てて自分のスマホを開いて同じ写真を探す。
けれど、そこには誰も写っていない。
ただの古民家の入口だけが映っている。
「すごいな……これ」
「ほんまに写ってるやん……なんで?」
二人で顔を見合わせ、思わず笑ってしまった。
怖いというより、信じられないという気持ちの方が強かった。
料理が運ばれてきて、湯気がふわりと立ち上る。
その香りに気持ちがほぐれ、
「まあ、ええか。ええ体験したな」
と自然に笑い合った。
不思議な一日だった。
でも、悪くない一日だった。




