お茶の香りと謎のお客さん3
お茶を程よく飲みながら、近況やどうでもいい昔話を続けていた。
縁側に差し込む光がゆっくりと角度を変えていくのを眺めつつ、
こんな時間が久しぶりだな、とふと思う。
その時、ふと視界の端に違和感があった。
縁側のいちばん端に、老紳士がひとり腰掛けて、
静かに湯呑みを手にしていた。
あれ?
さっきまで、あんなお客さんいたかな。
話し込んでいて気づかなかっただけかもしれない。
けれど、席に案内された時には誰もいなかった気がする。
女友達の方を見ると、彼女も同じように首を傾げていた。
「どうしたん?」
小声で尋ねると、彼女は視線を老紳士に向けたまま言った。
「いや……あの端のお客さん、知らんうちにいたよね?」
「そうやな。俺ら話し込みすぎて気づかんかったんかもな。
うるさくしたなら申し訳ないけど」
そう言い合っていると、老紳士がこちらに顔を向けた。
目が合った瞬間、ゆっくりと口元が上がる。
ニヤリ、と笑った。
「お構いなく。静かなここも好きだがね。
人の声が響いているこの場所も、悪くないんだよ」
穏やかな声だった。
怒っているわけでも、嫌味でもない。
「すみません、少し声を落としますね」
そう返すと、老紳士は軽く頷き、また湯呑みに視線を戻した。
それだけのことだった。
気にしないことにして、また二人で話を続けた。




