お茶の香りと謎のお客さん1
冬の寒さがようやく緩んできた頃、久しぶりに仲のいい遠い女友達からLINEが入った。
「久しぶり。今度行ってみたい喫茶店あるんやけど、どうかな?
私の周り、古い物好きな人少なくてさ。古民家カフェなんだけど」
ちょうど仕事の繁忙期が終わって、ようやくゆっくりできるタイミングだった。
いつもこの友人は、なぜか絶妙な時期に声をかけてくる。
「いいね、興味あるよ。どんなとこ?」と返すと、
「こんな感じ」とURLが送られてきた。
落ち着いた古民家に、美味しそうなお茶とお茶菓子。
縁側の写真もあって、どれも雰囲気が良い。
近くに温泉もあるらしく、これはちょっとした小旅行だなと思いながら、
「行こう」と了承の返事をした。
すぐに彼女から返事が来た。
「じゃあ、日にちどうする?
私は来週の土日か、再来週のどっちか空いてる」
カレンダーを開くと、ちょうど来週の土曜だけぽっかり空いていた。
繁忙期明けの休息にちょうどいい。
「来週の土曜なら空いてるよ」と送ると、
「じゃあそれで決まり。楽しみにしてるね」
その一文のあとに、
なぜかもう一度、同じURLが送られてきた。
既読をつけながら、
“なんで二回送ったんだろう”と一瞬だけ思ったけれど、深く考えずにスマホを閉じた。
約束の日の朝、少し早めに家を出た。
玄関を開けると、冬の冷たさがまだ残っているのに、
空気のどこかに春の匂いが混じっていた。
こういう季節の変わり目の匂いは、なんとなく気持ちが軽くなる。
車に乗り込み、エンジンをかける。
低く響く音がいつも通りで、少し安心する。
今日は気分的にダークめのロックが合いそうだと思い、プレイリストから適当に曲を選んだ。
音が流れ始めると、車内の空気が少し締まる。
久しぶりに友人と会うワクワク感が、
エンジンの振動と混ざってじんわりと高まっていく。
待ち合わせ場所までは、休日の朝らしく道が空いていた。
信号にもほとんど引っかからず、思ったより早く着いた。
けれど、彼女はすでにそこに立っていた。
手を振ると、向こうも気づいて軽く笑う。
久しぶりに見るその笑顔に、胸の奥がふっと軽くなる。
「早かったな」
「なんか、楽しみでさ。家におっても落ち着かんかった」
そう言って助手席に乗り込むと、
車内に流れていたロックの低い音に
「相変わらずやな」と笑った。
シートベルトを締める音がカチリと響く。
その音を合図にするように、車を発進させた。




