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古民家の記憶3

挨拶も程々に、さっそく中を見せてもらうことになった。男性の営業さんが鍵束を取り出し、古い引き戸の錠前に差し込む。金属が擦れる、乾いた音がした。

鍵が外れた瞬間、ふわりと、古い家特有のホコリの匂いが鼻をついた。それに混じって、微かに“誰かの生活の匂い”が残っている。

洗剤とも柔軟剤とも違う、もっと曖昧な、“人がいた痕跡”のような匂い。

営業の二人は、なぜかその場で足を止めた。鍵を開けた本人ですら、すぐに中へ入ろうとしない。ほんの一瞬だけど、二人とも視線を合わせて、「どうぞ」と言うタイミングを探しているように見えた。

(あれ……?)内見でこんな“間”が生まれるのは珍しい。

「失礼します」

そう言って、先に中へ足を踏み入れた。二人は少し遅れてついてくる。

玄関を入ると、広めの土間が広がっていた。古い家にしては綺麗に片付いている。ただ、どこか“使われていない時間”が積もっているような静けさがあった。

土間から続く長い廊下は、奥へ行くほど光が届かず、空気が少しずつ冷えていくように感じた。

廊下の途中には客間があり、その先には和室がいくつか並んでいる。畳は日焼けしているが、破れてはいない。

障子も張り替えられているのか、妙に白い。

床の間のある部屋に入るまでは、特に変わったことはなかった。写真も問題なく撮れている。カメラの液晶には、見たままの古民家が淡々と映っていた。

ただ、営業の二人は相変わらず部屋の隅や天井を“確認するように”見回していて、その視線の動きだけが、この家の空気と噛み合っていなかった。

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