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闇に潜む影と因縁の代償

昔、一緒に走っていた友人から聞いた話だ。

その日は、月はなく、周囲は底なしの闇に沈んだような峠道の夜。

二台のスポーツカー、日産シルビアとトヨタMR2が、ヘッドライトの筋だけを頼りに駆け降りる。

シルビアの助手席には、年若い女が座っていた。彼女は走り屋の男の新しい恋人だ。だが、その存在こそが因縁を呼び覚ました。数年前、男は事故で婚約者を失っていた。結婚式を控え、白無垢を着るはずだった女を。

峠を攻める中で連続ヘアピンカーブの先に、ふと漆黒の中に浮かび上がるように白無垢の女が立っていた。

月明かりもないのに、その衣だけが闇に浮かび上がり、ヘッドライトにも消えない。裾から滴る黒い影は、血のように路面を染めていた。

助手席の女は震え、「誰かいる!」と叫んだ。だがMR2の運転手には何も見えない。

シルビアの男だけが、因縁の影を見ていた。

峠を降りきった後、二人は暗い道の駅に車を停めた。

街灯は半分以上が消え、人気もなく、売店のシャッターは閉じられている。自販機の光だけがぼんやりと浮かび上がり、虫の羽音が響く。

缶コーヒーを握る指先は冷たく痺れ、まるで誰かに掴まれているようだった。助手席の女は怯え、「あれは誰?」と問う。男は答えられない。背後から衣擦れの音がしたが、振り返ると誰もいない。

帰路の国道。突如、トラックのヘッドライトが迫る。避けきれず衝突。

男は生き残ったが、両手の薬指と小指は潰れ、二度と元には戻らなかった。助手席の女は奇跡的に無傷だった。

病室で目を覚ました時、ベッドの足元に白無垢の女が立っていた。

顔はやはり見えない。だが、その衣の裾には助手席の女の影が重なって見えた。まるで「奪うのは次だ」と告げるように。

それ以来、その峠ではこう噂される。

白無垢の影を見た者は、必ず“愛した者”を代償に奪われる。

シルビアの男は指を失い、助手席の女は影に狙われ続けることになった。

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