古民家の記憶2
翌日、少し早めに現地に着くように家を出た。
古民家を見るのは好きだし、写真で見るのと実際に立つのとでは印象がまるで違う。
その差を確かめたくて、デジタルカメラをバッグに入れた。
目的地に近づくにつれて、周囲の家並みが少しずつ古くなっていく。
新しい住宅街の明るさが遠ざかり、
代わりに、空気がゆっくり沈んでいくような静けさが増していった。
現地には約10分前に到着した。
まだ早いだろうと思っていたのに、
不動産屋の営業さんはすでに来ていた。
しかも男女二人だ。
古民家の前で並んで立つ二人は、
どちらもスーツ姿なのに、妙に落ち着かない雰囲気をまとっていた。
古い木造の家の前で、二人だけが浮いて見える。
少し驚きながらも、歩み寄って声をかけた。
「○○不動産さんですか? 本日はよろしくお願いします」
こちらが頭を下げると、
二人はほぼ同時にこちらへ向き直り、
営業スマイルを浮かべて深く会釈した。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。
担当の△△と申します。今日は同僚の□□も同行しております」
男性が丁寧に名乗り、
隣の女性も軽く会釈して続けた。
「本日はお時間いただきありがとうございます。
早めに着いてしまって……お待たせしてしまいましたか?」
その言い方が、どこかぎこちない。
“早く来た”というより、
“早く来ざるを得なかった”ような、微妙な硬さがあった。
「いえ、こちらこそ早く着いてしまって。
すみません、よろしくお願いします」
そう返すと、二人はまた同時に頷いた。
その動きが妙に揃っていて、
胸の奥に小さな違和感が沈んだ。




