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正月休みの終わりに後日譚

財布を渡した時、

彼は無言で手元のハサミを取り、

血文字の札の端を チョキン と切り落とした。


その瞬間


空気がふっと軽くなった。

まるで、張りつめていた糸が切れたように。

彼は眠たげな目のまま、口の端だけで笑った。

「まぁ、これで機能せんやろ。

 とりあえず俺の方で処分しとくわ」

そう言って、財布と札を袋にしまい込む。

「また酒でも持って遊びに来いよ」

「いやいや、お前んとこ怖いねん」

と軽口を叩くと、彼は鼻で笑った。

「そうや、お前。

 友人んとこ戻って、今日出てこんか確認だけしとけよ」

それだけ言い残し、

夜の闇に溶けるように去っていった。


俺は友人に電話をかけた。

「戻ってええか? 報告もあるし」

元々泊まる予定だったので、

友人はすぐに了承した。

家に戻ると、

疲れ切った彼女さんと、

それを支えるように立つ友人がいた。

「……全部、終わったで」

そう伝えると、

二人とも肩の力が抜けたように座り込んだ。

その夜は、

俺がキッチンで晩飯を作り、

三人で明るく飲み会をすることにした。

彼女さんはまだ少し不安そうだったが、

それでも笑っていた。

あの夜の怯えた表情とはまるで別人だった。

やがて彼女さんが寝入った後、

友人と二人で静かに話をした。

「……お前、お局様に気に入られてるやろ?」

友人は苦笑し、遠い目をした。

「……断ったはずなんだけどなぁ。

 なんか、ずっと目ぇつけられてた気はする」

その声には、

“思い当たる節がある”という重さがあった。

その夜は特に何も起こらず、

平和に朝を迎えた。


数日後。

友人から短い連絡が来た。

「お局様、体調不良で会社辞めたらしい」

それだけだった。

俺はスマホを置き、夜の空を見上げた。

風が静かに吹いている。

人の心は難しい。

執着も、嫉妬も、恨みも、

形を持たないまま積もっていく。

そして時に、形を持ってしまう。

遠い目をしながら、

俺は静かに息を吐いた

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