正月休みの終わりに9
札入れを完全に開封した瞬間
背骨の奥を氷で刺されたような悪寒が、
一気に全身を走り抜けた。
息が詰まる。
心が折れそうになる。
だが、ここで怯んだら“飲まれる”。
そんな確信があった。
俺は奥歯を噛みしめ、
強い意志で
ガッと、札入れを開いた。
中には…
血文字で書かれた札が、1枚。
赤黒く乾いた血で、
見たことのない文字がびっしりと書かれている。
そしてその札の周囲には、
- 乾いた土
- こびりついた血
- 何かの脂のような、ねっとりした膜
それらが混ざり合い、
異様な臭気を放っていた。
俺はそれを見た瞬間、
直感と経験が同時に告げた。
こいつが原因や。
財布そのものではなく、
この札が“封じられていた”ことが問題だった。
俺はゆっくりと顔を上げ、
友人と彼女さんを見る。
二人とも、息を呑んで固まっていた。
「……これ、俺が預かるわ」
静かに、だがはっきりと言った。
「ここに置いとくのは危ない。
適切に扱ってくれるところに持っていく。
そういう場所は知ってる」
友人はすぐに頷いた。
彼女さんは震えながらも、小さく首を縦に振った。
その頷きには、
“もう見たくない”
“でも、終わらせたい”
そんな切実な願いが滲んでいた。
俺は札を慎重に摘み上げ、
財布ごと封じるように手元へ引き寄せた。
空気が、さらに重く沈む。
俺は静かに息を整えた。




