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正月休みの終わりに8

テレビモニターに映し出された公式の財布の映像を見た瞬間、胸の奥で何かがカチリと噛み合った。


「……ああ、これか」


違和感の正体に気づいた。

目の前の財布と、画面の財布。

同じはずなのに、決定的に違う部分がある。

「……これ、札入れ……ひとつ、閉じられてるな」

俺がそう呟くと、友人も画面を凝視し、

ゆっくりと俺の方を見た。

「……ほんまや。ひとつ、無い……」

新品の財布なのに、

本来あるはずの札入れの一部が“縫い潰されている”。

まるで、

何かを隠すために、意図的に封じたような

そんな不自然な閉じ方だった。

俺は財布を手に取り、

指先でその“塞がれた部分”を軽く押した。

中に空洞がある。

だが、指は入らない。

完全に閉じられている。

友人と顔を見合わせ、

俺はキッチンの彼女さんに声をかけた。

「……この財布、解体していい?」

彼女さんはビクッと肩を震わせ、

しばらく言葉が出なかった。

そして、

小さく、小さく頷いた。

その頷き方は、

“見たくないけど、見ないと終わらない”

そんな覚悟のようにも見えた。

俺は友人に言った。

「悪い、ハサミとカッター持ってきてくれ。

 それと……彼女さんについててやれ。

 1人にしたらあかん」

友人はすぐに動き、

道具を持って戻ってきた。

「……頼むわ」

俺は財布をテーブルに置き、

塞がれている札入れの縫い目にカッターの刃をそっと当てた。

革が、わずかに軋む。

ゆっくり、慎重に、

縫い目を切り開いていく。

切り込みが深くなるにつれ、

財布の中から……

土のような、湿った匂い

がふわりと漏れた。

さっき和室で感じた匂いと、同じ。

俺は息を整え、

さらにゆっくりと、封じられた札入れを開いていった。

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