正月休みの終わりに7
とりあえず、目の前の財布を手に取った。
ブランド物の女性用。
色も形も、どこにでもあるような“普通”の新品。
……そう、“普通”すぎる。
パッと見は特におかしな点はない。
傷も汚れも、変な匂いもない。
だが…
おかしな点がないこと自体が、逆に違和感を強めていた。
新品なのに、
どこか“古びた気配”だけがまとわりついている。
俺はスマホを取り出し、
ブランド名を入力して検索した。
同じ財布はすぐに見つかった。
色も形も、縫い目の位置も一致している。
「……ふむ」
実物を手に取りながら、
スマホの画面と見比べていく。
縫い目、ロゴの刻印、金具の形状。
どれも公式の写真と同じだ。
だが、
スマホで公式の映像を再生した瞬間、
胸の奥がざわりとした。
映像の財布と、目の前の財布。
同じはずなのに、どこかが違う。
どこが違うのか分からない。
形でも色でもない。
細部でもない。
“雰囲気”が違う。
映像の財布はただの物なのに、
目の前の財布は……“見ている”。
そんな感覚が、背中をひやりと撫でた。
俺はスマホを置き、友人に声をかけた。
「悪い、パソコン起動してくれへん?
テレビモニターに映して、公式の映像を大きく見たい」
友人はすぐに頷き、
リビングの隅に置かれたノートパソコンの電源を入れた。
「了解。テレビに繋ぐわ」
ケーブルを差し込み、
テレビの画面がふっと明るくなる。
その瞬間、
キッチンにいる彼女さんが、
なぜかこちらを怯えたように見た。
まるで“その財布を大きな画面に映すこと”を恐れているそんな目だった。
俺は何も言わず、
ただ財布を手にしたまま、
テレビ画面が切り替わるのを静かに待った。




