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正月休みの終わりに5

「ふむ……そんな感じの話なら、たしかに怪談蒐集してる俺に話すのも分かるわ」

そう言いながら、頭のどこかで状況を整理していた。

ただの怪談じゃない。

“毎晩出る”“日本語じゃない声”“首を締める”

そして“新品の財布”。

俺は紅茶を一口飲んでから、何気ないふうを装って聞いた。

「その……お局様、どこ行ってたん?」

友人は少し考えてから答えた。

「東南アジアかな。なんかその辺やって言うてたわ」

「ああ……なるほどな」

思わず声が低くなる。

東南アジア。

呪術、霊具、祈祷、供物。

“物に宿るもの”の話は、あの地域にはいくらでもある。

「……とりあえず、財布見せてくれへんか?」

俺は彼女さんの方を向いて言った。

彼女さんは、びくりと肩を震わせた。

「……触りたく、ないんです……」

その言い方が、ただの嫌悪じゃなく“恐怖そのもの”だった。

「ほな、悪いけど……お前、取ってきてくれへん?」

俺は友人に頼んだ。

「中身は全部出してからでええ。

 札もカードも抜いて、財布だけ持ってきてくれ」

友人はすぐにうなずいた。

「わかった。……なあ、ええか?」

彼女さんに確認すると、彼女さんは小さく、小さく頷いた。

その頷き方が、まるで

“あれに触れたくない”

“あれがある場所に近づきたくない”

そう言っているように見えた。

友人が立ち上がろうとした瞬間、

ふと気になって俺は口を開いた。


「……和室に置いてんのか?」


その言葉に、二人が同時にこちらを見た。

驚いたように、目を大きく開いて。

一瞬、空気が止まった。

俺は確信した。


入ってきた時に感じた“あの違和感”。

背中を押してきた“あの気配”。


あれは、ただの気のせいじゃなかった。

友人が、ゆっくりと口を開く。

「……なんで分かったんや?」

和室の襖は、さっきと同じように閉まっている。

けれど、そこから流れてくる“空気の層の歪み”は、

今はもう隠しようがなかった。

どうやら、俺の直感は正しかったらしい。

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