正月休みの終わりに3
促されるまま足を運び、
「明けましておめでとうございます」と彼女さんにも挨拶をする。
取りあえずケーキの箱を渡すと、
「ありがとうございます」と小さく頭を下げられ、
そのままテーブルへ通された。
座る前に、ふと背後にある和室の戸が目に入った。
ぴたりと閉め切られた襖。
そこから、まるで“空気の層”がずれているような、
強烈な違和感が流れ出している気がした。
何があるわけでもない。
音もしないし、匂いもない。
ただ、あの空間だけが“別の温度”を持っているように感じた。
胸の奥がざわつく。
けれど、ここで立ち止まるのも変だと思い、
違和感に蓋をして椅子に腰を下ろした。
彼女さんが紅茶を淹れてくれる。
湯気が立ち上り、香りが広がるのに、
部屋の空気はどこか冷たいままだった。
「で、何があったんや?」
そう切り出そうとした瞬間、
カップを置いた彼女さんの手が、かすかに震えているのが見えた。
震えは、寒さのせいではなかった。
もっと、別の理由で揺れているように見えた。
友人は、何も言わずにこちらを見ていた。
その視線もまた、どこか張りつめていた。
向かい側に友人カップルが並んで座った。
二人とも姿勢は普段通りなのに、
どこか“落ち着かない影”のようなものがまとわりついて見えた。
友人が、少し申し訳なさそうに口を開く。
「正月早々すまんな」
その横で、彼女さんも小さく頭を下げる。
「すみません……急に」
二人の声は普通だ。
けれど、その“普通さ”が妙にぎこちなく感じられた。
背後の閉め切られた和室から漂う違和感が、
じわじわと背中を押してくる。
紅茶の湯気が揺れているのに、
部屋の空気はどこか冷たい。
俺はカップをそっと置き、
二人の顔を見比べながら言った。
「……で、どうしたんや」
その瞬間、
友人と彼女さんが一瞬だけ視線を交わした。
その“間”が、胸の奥にざわりと響いた。




