初めての1人夜勤後日譚
夜勤が無事に終わり、交代の先輩がニヤニヤしながらやってきた。
「おっ、寝てなかったなwww ちゃんと起きてて安心したぞ」
そんな軽口を受けて、眠い目をこすりながら挨拶する。
「おはようございます。大丈夫ですよ、そんな寝ませんって」
先輩は一度更衣室に行き、着替えて戻ってくると、
「引き継ぎ事項あるか?」といつもの調子で聞いてきた。
業務上の引継ぎをひと通り済ませたあと、
ふと昨日のことを思い出した。
「あ、先輩。昨日の夜勤で、ちょっと変なことあったんですよ」
そう言って、子供の笑い声や足音、勝手に淹れられたコーヒーのことを話した。
先輩は最初こそ笑って聞いていたが、
途中から表情が変わった。
「……お前も、それがあったんか」
低い声でそう言った。
「俺もだよ。初めての一人夜勤の時にな」
そう言ってから、少し間を置いて続けた。
「だけどな。誰が入れたかわからんコーヒーを飲むのはアカンぞ」
「え……」
「不用心すぎる。何も無かったからいいものの、
もし不審者が入れたもんやったら、お前、死んでるかもしれんぞ」
叱られたというより、本気で心配している声だった。
「……すみません」
先輩はため息をつきながら、ぽつりと言った。
「まあ……この職場ではな。
一回は経験するらしい、不思議な体験や」
初めての一人夜勤。
どうやら、あの夜の出来事は、
俺だけの体験ではなかったらしい。




